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知的障がい者の自傷行為、原因や対応

自傷行為とは

 

自傷行為は自らを死なない程度に傷つける行為です。
その多くは、10代〜20代に見られます。
自傷行為はやめたくてもなかなかやめられません。

 

言葉が出にくかったり、対人関係が苦手な子どもの場合は、
泣き叫んだり、暴れたり、周囲からすると困った行動を通してしか
コミュニケーションする方法がありません。

 

「自分を傷つける」ことによって結果的に要求を叶えたり、
嫌なことしなくてすんだりといった経験によって
コミュニケーションの手段として自傷行動が
習慣化してしまっていることも考えられます。

 

痛くても行う理由
  • 注目を引きたい、かまってほしい(注目
  • 何か物が欲しい、活動をやりたい(要求
  • 活動をやめたい、場所を避けたい等、いやだという気持ちを伝えたい(拒否

 

自傷行為の例
  • 頭を床や壁にぶつける
  • 頭や顔を手でたたく、ひっかく
  • 自分の手をかむ
  • 髪の毛やまゆ毛を抜く
  • 体をかきむしる
  • 自分の爪を噛んで食べてしまう

 

 

 

自傷行為の原因

 

コミニュケーションの方法を獲得していない時期に特に多くみられるもので、
自分の気持ちや考えを周りに理解してもらえない事や物事が上手くいかないことが
(伝えたいが上手く伝える手段が無いこと)
ストレスになり自傷行為に走ってしまいます。

 

また、本人に対し周囲から様々な刺激や情報が入ってくるが
その物事が理解または処理が出来ないことが原因である場合もあります。

 

ほか、強度行動障害者()が自閉症の場合には、
物事の考え方や感覚が健常者と違う場合が多く、
お互いに理解が難しいという事も理由の一つになります。

 

そのため、強度行動障害は周囲を困らせたりする行動ではなく、
本人が困っているSOSのサインだと考えるべきです。

 

  • 周囲に気持ちを上手く伝えられない
  • 相手の気持ちを上手く理解できない
  • 寂しい、かまってほしい、会話が少ない
  • 周囲の注意をひきたい、さみしい
  • 物や活動の要求を叶えたい、意にそわない時
  • 自分なりのこだわり
  • お腹が減った、風呂に入りたい、眠たい、睡眠不足
  • 病気の兆し、便秘、月経中など
  • 周りが騒がしい物音、部屋が暑い・寒い
  • 環境変化やいつもと違う生活パターン、急な予定変更
  • 初めての事や人、場所
  • 普段の生活の疲れやイライラ、いらだちから
  • 周りの人から不愉快な思いをさせられたとき
  • 時間の過ごし方が分からない、余暇の過ごし方が乏しい、退屈なとき
  • (やることがなくなった時、暇のつぶし方がわからない)

  • 癖になっている
  • (普段の自傷行為に慣れてしまい痛みを感じにくくなっている)

  • 気分変動、不安・怖いときなど

 

自分で顔を引っかく、膝や肘を壁に打ち付ける、
  変形してしまうほど頭部を叩くなどのひどい自傷行為。

 

ちなみに我が家の子どもも涙を流しながら、
自分の手で頭や顔を何度も叩く自傷行為を繰り返すことがあり、
その度に胸を痛めることも多いのですが、
出来るだけ子供の笑顔が今日よりも明日増えていけるように
日々、試行錯誤しながら生活環境を見直しています。

 

 

 

自傷行為の対応

 

ケガなどをしないように安全を確保する
過剰な反応を避ける

 

自傷行為は感情の高まりがきっかけとなっていることが多いため、
なるべく早く止めるためには、子どもの気持ちを落ち着かせること
鍵となってきます。

 

過剰に大きな声で叱ったり、子どもが痛く感じてしまうほど体を押さえつけて
止めると感情を更に刺激してしまいます。

 

また、自傷行為をしている最中に、それを止めるためにやさしい言葉をかけたり、
抱きしめたり、おやつを上げたりして要求をとおすことは、
子どもに「自傷行為をするといいことがある」と思わせてしまうので逆効果です。

 

ここは冷静に、けがなどをしないように安全を確保した上で、
先に用意した本人が落ち着けるグッズやクッション、
リラックスできる場所に誘導し、自傷行為が止まるまで待ちましょう。

 

本人への認知
  • 予告、見通し
  • 状況のわかる言葉かけ
切り替えの援助
  • 他の行動を与えてみる
  • 好きなアイテム
  • 遊びの誘導・拡大
環境調整
  • 周囲の調整
  • 主介助者の安定(疲れ改善)、冷静さ、子どもへの思いやり
行動療法
  • 運動
情緒の安定を図る
  • 静かな声かけ
  • 寄り添う
  • クッション、ソファー
通常の声かけ
  • 制止の声かけ

 

 

 

ステップ@ 自傷行為をやりそうだな、と思ったら、
先手を打つ

起こる前に、お子さんに適切なふるまいをさせましょう。
自閉症スペクトラムや発達障害の子どもは、自傷行為の場合、
自分を叩いてしまった、という事実が出来てしまうと、
それは自分の経験として身についてしまいます。

 

叩く前に手を止めてなだめ、気持ちの切り替えが難しいようなら
子どもをリラックスできる場所に誘導して対応するようにしましょう。

 

ステップA あなたの気持ち、分かってるよ、
子どもの気持ちによく気が付いて共感しよう

子どもが問題行動を起こしているのではなく、
「泣いて自分にしがみついてきている」、「助けてほしいんだ」と思っている
親は自分の見方だ、という事を理解させることが、子どもの成長に一番つながります。

 

ステップB 落ち着かせて、ちゃんと顔を見る

パニックになり、まわりが見えない状況では、
どんな言葉をかけても効果はありません。
まず言葉をかけられる体制を整えてください。

 

ステップC なんでダメなの?をお話しする

落ち着いてから言葉が遅れていて理解出来なくても、
それでもちゃんと説明すべきで、説明するから理解して行きます。
ちゃんと分かると信じて、顔を見て説明して対応するようにしましょう。

 

ステップD ちゃんとできてから、を貫こう

自閉症スペクトラムや発達障害の子どもは、
パターン化するのが得意なため、ダメと理解していても、
問題行動が癖になってしまうことがあります。

 

正しい行動に置き換えてあげることで、
問題行動は正しい行動へと変わり、習慣化していきます。

 

正しい行動は、一人で出来る必要はありません。
おもちゃを無理やり奪い取る前に、
ママがお子さんの手を持って、「かして」と一緒に手を差し出してあげたり、
一緒になっておもちゃの片づけを手伝ってあげましょう。

 

ステップE ダメなことはダメと聞き入れない
(厳しすぎてもNG)

 

自閉症スペクトラムや発達障害の子どもは、自傷行為を起こせば
何でも許されると誤って認識してしまうことがあります。
すると、もう少しダダをこねれば、ママは許してくれる、と思って、
自傷行為がより大きくなることがあります。
ダメなことはダメとなだめましょう。

 

例えば、道路に飛び出す、熱いやかんに触ろうとする、
などの危険な行為は、問題行動が起きようと何しようと、
絶対に守らせないといけません。

 

その一方で、発達の段階的に、まだ難しいことが
ルールになっているときは、ルールを見直しましょう。

 

おやつが1個では我慢できないなら、何個なら我慢できるのか、
また家にお菓子が沢山あるから欲しがるのなら
お菓子を買わないようにするとか、
子どもに大人のルールを押し付けるのではなく、
大人の方が子どもに合わせてあげましょう。

 

また、「かして」が言えない子どもの場合は、
代わりに言ってあげる、とか、
順番が待てないなら順番待ちが少ない所で練習するなど、
お子さんが我慢しすぎて爆発しないように、
大人が環境調整をしてあげる必要があります。

 

ステップF 事前に説明しておく

自閉症スペクトラムや発達障害の子どもは、
急な予定変更や、いつもと違う方法、
初めての事・人・場所、自分の思っていることと違う事が苦手で、
自分なりのこだわりがあり、それが原因で自傷行為が起きることがあります。

 

この場合の問題行動は、あらかじめ本人に伝えておくことで、
防ぐことが出来る場合もあるので、あらかじめ知らせておくようにしましょう。

 

出来るだけ詳しく、いつもとどう違うのか、どんな人が来るのか、
などを説明すると良いですね。言葉だけでは分かりにくい場合は、
絵や写真を使って説明するとイメージしやすいです。

 

 

 

自傷行為の対処法

 

本人は望んで自傷行為を選んでいるわけではなく、
今のところ「他に方法がない」ためにしかたなくやってしまう場合が多いです。

 

周囲に求められることは、子どもが自傷行為をしなくてすむよう、
環境を用意したりそれに代わるスキルを学習することです。

 

自傷行為は、してしまう原因も対処法も、
子ども一人ひとりのケースによって異なります。

 

そのため、その子がなぜ自傷行為に至るのかを考え、
その子に合った自傷行為を防ぐための方法を見つけることが重要です。

 

ステップ@ 自傷行為が起きた状況を記録する
  • 状況……いつ・どこで・だれと・どんな状況だったか
  • (子どもが自傷行為を起こす前に何が起きたか、起きていたか)

  • 行動……どのような自傷行為を起こしたか
  • 結果……自傷行為を起こした結果、状況はどのようになったか

 

例(回避・拒否)

  • 状況……食事中、お母さんが嫌いな食べ物を口に入れた
  • 行動……頭をテーブルに打ち付けた
  • 結果……食べなくて済んだ

 

ステップA 自傷行為をしなくてもすむようプランを考える

 

自傷行為が起きない工夫・環境調整をする

  • 少し食べたら好きな物を食べられるようにする
  • お母さんも一緒に同じものを食べる
  • 無理強いはしない
  • 好きなテレビを観ながら食べていいことにする
  • 小さく切る
  • どうしても食べられないものは出さない

 

どうしたらいいか、望ましい行動を教える
自傷行為が起きないように工夫する一方で、
自傷行為の代わりとなる適切な行動やスキルを教えることも重要です。

 

例えば、拒否の伝え方を教え、食べたくないときテーブルに
頭を打ち付けるのではなく、するべき適切な
コミュニケーション行動に置き換えます。

 

  • 「いやだ」のサインを教える
  • 絵カードで拒否を教える
  • 「“いらない”って言おうね」などと、自分の意思を伝えるための言葉を教える

 

このように、子ども本人にとってできるだけ負担や
我慢することが少ない方法を、家庭でたくさん考えてみましょう。

 

ステップB プランを実施し、うまくいかなければプランを見直す

 

ステップAで考えた中から家庭で実施しやすい方法を選んで、
やった結果どうだったか記録をとりながら一定期間やってみます。

 

家庭でプランを実施する際はその目的を
家族や周囲に説明し、共有することが大切です。
毎回対応が変わったり人によって対応が変わらないようにします。

 

例えば、頭を床に打ち付けて「母親以外の人だったら要望が通った」と
いうことになると、その行動は繰り返されてしまいます。
家族もその周囲も、子どもに対して一貫した対応を心がけましょう。

 

子どもが自傷行為ではない方法でうまく過ごすことができたら、
すぐに褒めてあげましょう。

 

「トークンエコノミー(ごほうびの引換券)を活用」と言われる
シールやポイントを使って褒めるのもおすすめです。

 


うまく過ごすことができたら1ポイントの引換券をあげて
5ポイント貯まったら、お菓子をご褒美であげるなど

 

わかりやすく褒めることで子ども自身がうまくできたことを実感しやすくなり、
望ましい行動を増やすことにつながります。

 

コミュニケーションスキルをつけながら、嫌な刺激を避け落ち着く方法や
手持無沙汰のときにできる余暇スキルを教えるていくことも大切です。

 

 

 

自傷行為の相談先

 

子どもの自傷行為を減らして穏やかに過ごせることは、
家庭だけではなく医療機関への相談も選択肢の一つです。
ちなみに我が家も自宅近くのメンタルクリニックでお世話になっています。

 

「心療内科」「精神科」「発達外来」
「小児神経科」「児童精神科」が専門になります。

 

 

 

自傷行為を止めることができたときは必ず褒めてあげる

 

自傷行動が止まり、子どもが完全に冷静さを取り戻した
タイミングで落ち着けたことをしっかり褒めるようにしましょう。

 

「別の部屋に行って落ち着けたね」「我慢できて偉かったね」などと
褒めてあげることで子どもは安心感を抱き、
更には「自傷行動をやめた方がいいことがあるんだ」と
感じやすくなり、予防にもつながります。

 

 

 

 

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